育休前の家計準備
収入の変化と見通しの立て方
子どもを迎える前のお金の不安は、たいてい二段階でやってきます。まず「出産費用、いくらかかるんだろう」。それが見えてくると、次に「育休中、収入はどうなるんだろう」。この記事では、その両方を順番に扱います。
先に結論だけ言うと、育休の家計でいちばん効くのは、制度の細かい知識ではなく、「最初の2〜3ヶ月は収入が止まる」と知ったうえで、産前に月ごとの見通しを作っておくことです。この記事では、モデル世帯の数字を最後まで計算しながら、見通しの作り方を説明します。
なお、給付金の正確な金額計算は勤務先・ハローワークの確認がいちばん確実です。この記事は家計の見通しに必要な精度までを扱います。
出産費用は、どう見ておくか
- 出産育児一時金が原則50万円。健康保険から支給されます(厚生労働省の案内)。出産費用がこの範囲に収まる場合もあれば、病院や地域によっては数万〜十数万円の自己負担が出ることもあります。産院に費用の目安を早めに聞いておくのがいちばん確実です
- 直接支払制度を使えば、大金を立て替えなくていい。一時金が健康保険から病院へ直接支払われ、窓口で払うのは差額だけ。多くの産院で使えます
- 妊婦健診の費用も月々に置く。自治体の助成券がありますが、検査内容により自己負担が出ます。回数が多いので「健診 月数千円」と見込んでおくと現実に近づきます
収入は減るというより、もらい方が変わる
育休中の収入の柱は、雇用保険からの育児休業給付金です。要点を整理すると:
- 最初の180日は休業前の賃金のおよそ67%、それ以降は50%
- これは父親も同じです。産後パパ育休(出生時育児休業)も通常の育休も、同じ給付の仕組みに乗ります。いまや男性の育休は特別なことではないので、この記事のモデルは夫が3ヶ月取る前提にしています
- ただし上限があります。給付のもとになる賃金には月45万円前後の上限が設けられていて(毎年8月に見直し)、それを超える収入の人は、実際の給付率が67%より下がっていきます。額面が高い人ほど「67%もらえる」を鵜呑みにできない、見落とされがちなポイントです。いまの正確な上限額は厚生労働省のページで確認できます
- 給付金は非課税で、育休中は社会保険料も免除されます(免除されても将来の年金が減ることはありません)
- だから「67%」という数字の印象より、手取りベースの実感は大きくなります。額面32万円(手取り26万円ほど)の人なら、給付はおよそ月21万円。手取り比でみると8割強という感覚です
- 制度は更新されることがあります。2025年には一定条件で給付が上乗せされる新しい制度も始まりました。最新の条件は厚生労働省のページか勤務先で確認してください
最大の落とし穴は「金額」ではなく「タイミング」
金額の計算より先に、これを知っておいてください。給付金は毎月の給料のようには振り込まれません。
申請は多くの場合会社経由で、初回の振込は育休開始から2〜3ヶ月後になるのが普通です。以降も2ヶ月ごとのまとめ払い。つまり、金額の計算が完璧でも、最初の数ヶ月は口座残高が一方的に減っていきます。しかもこの時期に、出産費用の差額とベビー用品という大きな支出が重なります。
ここで不安になるか、「予定どおり」と思えるかは、産前に見通しを置いたかどうかの差です。
モデル世帯で計算してみる
共働き夫婦。妻(額面32万円・手取り26万円)は出産月から育休、夫(額面37万円・手取り30万円)も出産月から3ヶ月の育休を取ります。貯金180万円、生活費は子どもが生まれた後の想定で月32万円。給付は妻が月およそ21万円・夫が月およそ25万円(どちらも申請後に2ヶ月ごとのまとめ入金)、出産費用の差額10万円とベビー用品15万円を最初の2ヶ月に置きます。
| 月 | 入ってくるお金 | 出ていくお金 | 月末残高 |
|---|---|---|---|
| 出産月 | 56万(ふたりの最後の給与) | 42万(生活費+出産差額) | 194万 |
| 1ヶ月後 | 0円(ふたりとも育休中) | 47万(生活費+ベビー用品) | 147万 |
| 2ヶ月後 | 0円(ふたりとも育休中) | 32万 | 115万 ← いちばん少ない |
| 3ヶ月後 | 123万(夫が復帰+妻給付2ヶ月分+夫給付2ヶ月分) | 32万 | 206万 |
| 4ヶ月後 | 55万(夫給与+夫給付の残り) | 32万 | 229万 |
| 5ヶ月後 | 73万(夫給与+妻給付2ヶ月分) | 32万 | 270万 |
この世帯で残高がいちばん減るのは「2ヶ月後の115万円」です。ふたりで取ると収入ゼロの月が2回できるぶん、下がり方も大きくなります。それでも180万円の貯金で越えられ、給付が入りはじめる3ヶ月後からは残高が一気に回復していきます(社会保険料免除と非課税のおかげで、育休中の収支そのものは思ったより悪くありません)。夫婦で取るなら「残高がどこまで下がるか」を産前に見ておく。それがこの表の使い方です。
おひとりで出産を迎える場合も、考え方は同じです(収入の欄がひとり分になるだけで、考え方は変わりません)。大事なのは、この表をあなたの数字で産前に一度作ることです。残高がいちばん減るのはいつで、いくらまでか。それさえ分かれば、育休中に通帳を見て不安になる回数は目に見えて減ります。作り方は貯金シミュレーションのやり方に、ブラウザで試すなら貯金シミュレーターにどうぞ。
産前チェックリスト
- 産院に出産費用の目安と、直接支払制度が使えるかを聞く
- 会社に「給付金の初回申請をいつ出すか」を聞く(初回振込の時期がここで決まります)
- 住民税の支払い方法を確認する(下のFAQ参照)
- 収入が止まる2〜3ヶ月を含めて、月ごとの見通しを作る
- ベビー用品・内祝いなど時期が読める出費をカレンダーに置く
よくある疑問
Q. 給付金の初回はいつ振り込まれる?
育休開始から2〜3ヶ月後が目安です。会社が初回申請をいつ出すかで変わるので、産前に確認しておくと見通しの精度が上がります。
Q. 育休中も住民税は払う?
払います。住民税は前年の所得にかかるため、収入が減っても請求は続きます。給与天引きができなくなるぶん、納付書での支払いや一括徴収になることがあるので、会社に扱いを確認しておきましょう。ここは見落とすと痛い出費です。
Q. 社会保険料の免除で、将来の年金は減らない?
減りません。免除期間も納めたものとして扱われます。
Q. 上限にかかるのはどんな人?
額面月収が45万円前後を超えるあたりからです。たとえば額面60万円の人は、単純計算の「60万×67%=40万」ではなく、上限で頭打ちになった金額になります。共働きで収入が高い側が育休を取る場合は、見通しを立てる前に上限を確認しておきましょう。
Q. 給付額にボーナスは含まれる?
給付の計算のもとになるのは休業前の賃金で、賞与は含まれません。「ボーナス込みの年収感覚」で見積もると実際より多く見積もってしまうので注意してください。
Q. 夫婦で同時に育休を取れる?
取れます。給付もそれぞれに出ます。取り方のパターンや延長の制度は厚生労働省のページが正確です。
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